行ってまいりました。
ファッションにとどまらず様々なプロダクト・デザイナーとして世界的に知られるポール・スミス(Paul Smith)のキャリアの始まりから現在に至るまでの業績を辿ることのできる今回の展覧会。京都会場からの巡回展になります。
入口でチケットを切ってもらうと半券を返されると同時に来場者プレゼントとしてピンク色のイヤホンを手渡されます。これを使用して音声解説を聞いてみてくださいとのこと。
実は会場内の壁の所々にQRコードが設置されており、スマートフォンのバーコード・リーダーをかざすと、
その付近の展示物にちなんだ音声解説を無料で聴くことができます。メイン解説者は俳優の松田翔太氏。若々しくも落ち着いたナレーションで華やかな会場の雰囲気にとても合っていました。
さらに嬉しいことに館内の撮影は自由。展示物が少ないかなと感じつつも、Paulの創作の秘密を体感し、それを心の中に持ち帰ることができる展覧会だと思います。
入口を入ってまず驚くのが、会場の奥にまで続くアート・ウォール(Art Wall)。
これはPaulのオフィスの壁のほんの一部を再現したものだそうです。額装された絵や写真が壁一面に飾られています。そのコレクションは彼が10代の頃からのものだとか。著名な画家や写真家の作品もあれば、ポールのオフィス宛てに届けられた無名のアーティストの絵や写真まで分け隔てなくランダムにレイアウトされた作品群が色彩の洪水のように観る者に迫ってきます。
アート・ウォールを抜けると、その先にあるのはポール・スミスが最初に構えた店舗「1号店」を再現した白塗りの小部屋へ。本当に小さなスペースで、窓もなく、「店」というより「房」ですね。ここから世界的なブランドがスタートしたのかと思うと何ともいえない感慨が胸に押し寄せます。室内の壁にはビジネス・パートナーであり奥さんのポーリーンと笑顔で写るポールの写真が展示されています。彼女の存在なくしては今のポールの成功はなかったと彼は言います。今回の展覧会も実は愛するポーリーンに捧げたもの。天才の影にはやはりその存在を輝かせる素晴らしいパートナーがいるものなのですね。
「1号店」を抜けると、その先には現在のロンドン、コヴェントガーデンにあるポールのデザインスタジオを再現した展示が目の前に現れます。
整理整頓とは無縁とも言える雑多なモノで溢れかえるオフィスです。まるでオモチャ箱をひっくり返したような賑やかさ。ポールがよく使う言葉に「アイデアはどんなところからでも生まれてくる」というものがあります。この一見何の脈絡もないモノが乱雑に積み上がったカオス状態の室内ですが、よく観てみると新たなデザインの着想を得るための宝庫であることがわかってきます。ポールが目にしたもの、興味をひかれたもの、それぞれのモノ達が彼の頭の中で溶け合い、化学反応を起こすことで斬新なデザインが生まれてくるわけですね。整理整頓の行きとどいた仕事場だからといって必ずしも素晴らしいデザインが生まれてくるわけではない。むしろその逆もあり得る。仕事の仕方は本当に人それぞれなのだなと実感させてくれる展示です。
下の写真は「ポールの頭の中」を再現した展示。
壁に複数のモニターと鏡を設置し、頭上のスピーカーからは自らのデザインについて語るポールの声。モニターにはポールが父親からカメラを贈られた11歳の頃から撮り溜めている写真の数々が映し出されます。その鮮やかな色彩が鏡に反射してまるで万華鏡の中に入り込んだような不思議な空間を生み出しています。必見です。
会場の奥にはお馴染みのカラフルなストライプを施した車も展示されていました。
直筆のデザイン画も一部ですが展示されていました。
こちらはポールの最初の「ショールーム」となったパリのホテルのベッドルームを再現した展示。この展覧会に合わせてポール・スミス社が特別に制作したものだそうです。
2階に上がると、ポールが服飾だけにとどまることなくコラボレートした様々な製品が展示されています。ポールがコラボを行うかどうかの決め手はお金になるからではなく、面白そうかどうかだそうです。どのデザインもポールらしい色彩と遊び心に溢れています。
こちらはポールのオフィスに届けられた数々の贈り物(?)を展示したもの。
よく観ると三輪車やボディーボードに切手が貼り付けられています。梱包しなくても送料分の切手さえ貼ってあれば配達してくれる海外の郵便サービスに驚きです。その「贈り物」を律儀に保管しているポールのオフィスも驚きですが。
デヴィッド・ボウイとのコラボ。
ソースのパッケージまであります。
腕時計の展示の裏側には世界各国のポール・スミス社の店舗デザインの多様さを比較した展示と、その向かい側には一面ボタンが貼り付けられた壁が。普段見慣れたボタンもアイデアひとつでこのような素晴らしい極彩色のアートになるのですね。
近づいてみると、やはりボタンです。
会場の最後はポールがパリで行ったファッション・ショーの映像が流され、その向かい側に彼のデザインした服が展示されていました。服はハンガーに吊るされたりマネキンに着せたものがまとめて展示されていたのですが、手前に柵があるために近くで観ることができません。会場のスペースの都合もあるのかもしれませんが、この展示の仕方はもったいない気がしました。それにショーの様子を映したモニターの前に人が立ち止まってしまうために通路が塞がり、通過するのに困難でした。せっかくの展覧会の締めなのですから、もう少し人の動線をしっかり考えた展示をお願いしたいなあと少し残念な気持ちに……。展示物が素敵だっただけに。
展覧会場の最後には大きな付箋があり、そこにはポールのよく使う言葉である「Everyday is the new beginning.」が記されています。毎日を新鮮な気持ちで生きてこそ、素敵なデザインも自然と生まれてくる。ポールから我々への最後のメッセージ。確かに受け取りました。
ご興味を抱かれた方は是非。
ポール・スミス展公式サイト
http://paulsmith2016.jp
ファッションにとどまらず様々なプロダクト・デザイナーとして世界的に知られるポール・スミス(Paul Smith)のキャリアの始まりから現在に至るまでの業績を辿ることのできる今回の展覧会。京都会場からの巡回展になります。
入口でチケットを切ってもらうと半券を返されると同時に来場者プレゼントとしてピンク色のイヤホンを手渡されます。これを使用して音声解説を聞いてみてくださいとのこと。
実は会場内の壁の所々にQRコードが設置されており、スマートフォンのバーコード・リーダーをかざすと、
その付近の展示物にちなんだ音声解説を無料で聴くことができます。メイン解説者は俳優の松田翔太氏。若々しくも落ち着いたナレーションで華やかな会場の雰囲気にとても合っていました。
さらに嬉しいことに館内の撮影は自由。展示物が少ないかなと感じつつも、Paulの創作の秘密を体感し、それを心の中に持ち帰ることができる展覧会だと思います。
入口を入ってまず驚くのが、会場の奥にまで続くアート・ウォール(Art Wall)。
これはPaulのオフィスの壁のほんの一部を再現したものだそうです。額装された絵や写真が壁一面に飾られています。そのコレクションは彼が10代の頃からのものだとか。著名な画家や写真家の作品もあれば、ポールのオフィス宛てに届けられた無名のアーティストの絵や写真まで分け隔てなくランダムにレイアウトされた作品群が色彩の洪水のように観る者に迫ってきます。
アート・ウォールを抜けると、その先にあるのはポール・スミスが最初に構えた店舗「1号店」を再現した白塗りの小部屋へ。本当に小さなスペースで、窓もなく、「店」というより「房」ですね。ここから世界的なブランドがスタートしたのかと思うと何ともいえない感慨が胸に押し寄せます。室内の壁にはビジネス・パートナーであり奥さんのポーリーンと笑顔で写るポールの写真が展示されています。彼女の存在なくしては今のポールの成功はなかったと彼は言います。今回の展覧会も実は愛するポーリーンに捧げたもの。天才の影にはやはりその存在を輝かせる素晴らしいパートナーがいるものなのですね。
「1号店」を抜けると、その先には現在のロンドン、コヴェントガーデンにあるポールのデザインスタジオを再現した展示が目の前に現れます。
整理整頓とは無縁とも言える雑多なモノで溢れかえるオフィスです。まるでオモチャ箱をひっくり返したような賑やかさ。ポールがよく使う言葉に「アイデアはどんなところからでも生まれてくる」というものがあります。この一見何の脈絡もないモノが乱雑に積み上がったカオス状態の室内ですが、よく観てみると新たなデザインの着想を得るための宝庫であることがわかってきます。ポールが目にしたもの、興味をひかれたもの、それぞれのモノ達が彼の頭の中で溶け合い、化学反応を起こすことで斬新なデザインが生まれてくるわけですね。整理整頓の行きとどいた仕事場だからといって必ずしも素晴らしいデザインが生まれてくるわけではない。むしろその逆もあり得る。仕事の仕方は本当に人それぞれなのだなと実感させてくれる展示です。
下の写真は「ポールの頭の中」を再現した展示。
壁に複数のモニターと鏡を設置し、頭上のスピーカーからは自らのデザインについて語るポールの声。モニターにはポールが父親からカメラを贈られた11歳の頃から撮り溜めている写真の数々が映し出されます。その鮮やかな色彩が鏡に反射してまるで万華鏡の中に入り込んだような不思議な空間を生み出しています。必見です。
会場の奥にはお馴染みのカラフルなストライプを施した車も展示されていました。
直筆のデザイン画も一部ですが展示されていました。
こちらはポールの最初の「ショールーム」となったパリのホテルのベッドルームを再現した展示。この展覧会に合わせてポール・スミス社が特別に制作したものだそうです。
2階に上がると、ポールが服飾だけにとどまることなくコラボレートした様々な製品が展示されています。ポールがコラボを行うかどうかの決め手はお金になるからではなく、面白そうかどうかだそうです。どのデザインもポールらしい色彩と遊び心に溢れています。
こちらはポールのオフィスに届けられた数々の贈り物(?)を展示したもの。
よく観ると三輪車やボディーボードに切手が貼り付けられています。梱包しなくても送料分の切手さえ貼ってあれば配達してくれる海外の郵便サービスに驚きです。その「贈り物」を律儀に保管しているポールのオフィスも驚きですが。
デヴィッド・ボウイとのコラボ。
ソースのパッケージまであります。
腕時計の展示の裏側には世界各国のポール・スミス社の店舗デザインの多様さを比較した展示と、その向かい側には一面ボタンが貼り付けられた壁が。普段見慣れたボタンもアイデアひとつでこのような素晴らしい極彩色のアートになるのですね。
近づいてみると、やはりボタンです。
会場の最後はポールがパリで行ったファッション・ショーの映像が流され、その向かい側に彼のデザインした服が展示されていました。服はハンガーに吊るされたりマネキンに着せたものがまとめて展示されていたのですが、手前に柵があるために近くで観ることができません。会場のスペースの都合もあるのかもしれませんが、この展示の仕方はもったいない気がしました。それにショーの様子を映したモニターの前に人が立ち止まってしまうために通路が塞がり、通過するのに困難でした。せっかくの展覧会の締めなのですから、もう少し人の動線をしっかり考えた展示をお願いしたいなあと少し残念な気持ちに……。展示物が素敵だっただけに。
展覧会場の最後には大きな付箋があり、そこにはポールのよく使う言葉である「Everyday is the new beginning.」が記されています。毎日を新鮮な気持ちで生きてこそ、素敵なデザインも自然と生まれてくる。ポールから我々への最後のメッセージ。確かに受け取りました。
ご興味を抱かれた方は是非。
ポール・スミス展公式サイト
http://paulsmith2016.jp