本日は少し真面目な投稿です。

現在、六本木の森アーツセンターギャラリーにて
「フェルメールとレンブラント展」が開催中であり、
さらに今年の3月1日から上野の国立西洋美術館にて
「カラヴァッジョ展」が開催されることに合わせて、

二大巨匠の絵画技法の違いを知っていただくことで
読者の皆様により美術鑑賞を楽しんで頂くべく、

『カラヴァッジョとレンブラントの「光と闇」』

と題して、
学術的な考察をチョコっと綴っておきたいと思います。

ただ、これは私の極めて個人的な視点による比較対照(独断と偏見)ですので、
決してこれにとらわれず、
ご自身の眼と心で「美」をご堪能ください。
あくまで美術鑑賞の際の一助となれば幸いでございます。



カラヴァッジョとレンブラントの「光と闇」


本論ではカラヴァッジョ作《聖マタイの召命》とレンブラント作《63歳の自画像》を選び、
それぞれの様式的な違いを当時の芸術的・社会的な背景と関係づけ以下に論じる。

カラヴァッジョの描画技法
ミケランジェロ・メリージ、通称カラヴァッジョ(1571〜1610)は1571年にミラノで生を受け、1592年にはローマに移り住む。当時のローマはプロテスタントに対する反宗教改革の気運に湧き、多くの芸術家が集っていた。カラヴァッジョは徐々に頭角を現し、カラヴァッジョ様式と後に呼ばれる写実性と強烈な明暗対比を融合した絵画技法を確立した。その技法を極めて効果的に用いた作例が《聖マタイの召命》である。当時の賭博場を想起させる薄暗い部屋の戸口にキリストと思しき男が立ち、賭事に耽る男達の一人を指し示す。その頭上から一条の強烈な光が画面を横切り、世俗の闇を切り裂く。一見すると風俗画にしか見えないその画風はときとして宗教画としてのデコールムに欠け、依頼主であった教会から受け取りを拒否されることもあった。

レンブラントの描画技法
レンブラント・ファン・レイン(1606〜1669)は1606年、スペインから独立する間際のオランダ、ライデンに生を受けた。宗教画が偶像崇拝として禁じられるプロテスタントの支配する土地にあって、レンブラントは富裕な商工業者を主な顧客に工房を設立して量産した風俗画や肖像画を売り捌いた。バロックとカラヴァッジョ様式を昇華させたその画風は市民に広く受け入れられ、名声と富を獲得した。《夜警》はその頂点ともいえる大作であるが、その頃から妻の病などの度重なる不幸がレンブラントを襲う。愛する者を失い、浪費癖が祟って借金が膨れ上がり、まさに晩年は不幸のどん底であった。その最晩年に描かれたのが《63歳の自画像》である。かつて「光と闇の魔術師」と謳われた明暗を対比させた劇的な画面はなりを潜め、闇を淡く照らすような弱々しい光と荒い筆致が度重なる人生の不幸に打ちひしがれ、どこか諦観を感じさせる画家自身の内面を描き出している。

両者の描く「光と闇」の違い
カラヴァッジョの描く「光と闇」は、その強烈な対比により劇的な効果を画面に与えることに主眼が置かれている。世俗に塗れた民衆の日常を神の奇跡を象徴する光と闇の演出によって非日常的な瞬間に変容させるのである。それはまさにカトリック教会にとって、対抗宗教改革の理念に適うものであった。
一方でレンブラントが晩年に描いた自画像に宿る「光と闇」は、カラヴァッジョに見られるような強烈な明暗の対比は微塵も見られない。淡い光は極めて静謐かつ内省的であり、画面全体から滲み出てくるかのようである。画布に描き止める色彩と明暗もいつしか外見的な効果を狙うことを放棄し、虚飾を排した内面の「光と闇」を描き出すことに終始している。


ご興味を抱かれた方は是非。

「カラヴァッジョ展」特設サイト
http://caravaggio.jp/index.html

「フェルメールとレンブラント展」特設サイト
http://www.tbs.co.jp/vermeer2016/


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