nakaji art

我が心と身体が捉えた美について

2016年04月

行ってまいりました。
ルノワール展 チラシ ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会
ピエール・オーギュスト・ルノワールの傑作として名高いオルセー美術館の至宝、《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》が初来日ということでさっそく鑑賞に伺いました。

画家の初期から晩年までの歩みを作品を通して辿ることのできる今回の展覧会。
一人の画家の絵を描くことに対する飽くなき情熱と探求を感じることのできる構成となっていました。

ルノワールという画家は正直に申し上げまして
私自身、それほど好きな画家ではありませんでした。
明朗で平和な画面は確かに観ていて清々しく美しくはあるのですが、
芸術特有の甘美かつ妖しい毒気がないというか、いまいち中毒性に欠けるというか……。

ゴッホのような深い孤独と哀切も、ゴヤの《我が子を喰らうサトゥルヌス》のような人間の心の闇に巣食う獣性も
ルノワールの創り出す絵画には皆無です。
「後ろめたいこともなく老若男女が安心して観ることのできる健全な絵」という印象でした。

もちろん「明朗かつ健全な絵」という印象は今も変わらないのですが、
邪悪さや毒性を画家自身があえて作品から除去しているという事実を知ったことで、
自身の浅いモノの観方を大いに恥じると同時にルノワール作品の印象がガラリと変わりました。

「世の中は辛く悲しいことばかりだ。だったら絵画が楽しく、幸福に満ちていて何がいけない?」
そのような主旨のことをルノワールは言っています。
ルノワール自身も40代後半からリウマチに体を蝕まれ、晩年は車椅子での生活を余儀なくされ、
動かなくなった手に絵筆を括りつけて創作を続けたといいます。

「幸福に満ちた作品」を創作している人の人生が必ずしもその通りであるとは限らない。
むしろ逆であることの方が多いのかもしれません。
創作活動の奥深さというものをルノワールに教えられました。

さて、今回の展覧会に話を戻したいと思います。
何といってもまずはお目当ての《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》。
会場は連休初日にもかかわらず空いていたので、入口から順番に鑑賞してもよかったのですが、
一番観たい作品を目指して一直線に館内を進みます。
ルノワール展 ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会
今回、実物をはじめて目にしたのですが、まず感じたのが「青が美しい」ということ。
画面の所々に落ちた木漏れ日の美しさは言わずもがなですが、
明るい陽光の下で開かれた舞踏会の賑わいを描きだす画面が所々に配置された人々のまとう服の青のヴァリエーションによって引き締まり、美しい調和をなしていました。
人物配置も一見雑多に見えて、中央にいる人物の形成する三角形の安定した構図やあえて画面を途中で断ち切ることで奥行きを表現するなど、鑑賞者の視線を自然に絵の中へ誘導するような高度な計算が随所に見られます。まさに名画と言われる所以ですね。

その向かいの壁には、二枚の大作(本来は三枚連作)の《都会のダンス》、《田舎のダンス》が展示されていました。
ルノワール展 都会のダンス 田舎のダンス
これらの絵画は《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》に観られるような印象派特有の光の表現はなく、古典主義的な手法で描かれています。この時期、ルノワールは自身の芸術に行き詰まりを感じていました。人物画家のルノワールにとって、印象派の光の表現では人物が背景の中に溶け込んでしまい、存在感と肉感をもった人物を描くことが難しいことに苦悩を深めていたといいます。この《ダンス》連作はルノワールにとって、自身の絵画表現の転換期となる記念すべき作品です。
これから鑑賞に行く皆さまも《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》との表現法の違いを是非お楽しみください。

ちなみにこの二人の女性のモデルですが、
左の《田舎のダンス》の扇子片手に楽しげに微笑む女性は当時ルノワールと恋仲であり、後に妻となるアリーヌ・シャリゴがモデルと伝えられています。
一方の《都会のダンス》で洗練された白いドレスをまとう美女は後にユトリロを産む恋多き女、シュザンヌ・ヴァラドン。ルノワールは彼女の才能と美貌の虜だったといいます。
一説によれば、《田舎のダンス》のモデルもシュザンヌだったとか。アリーヌがあまりに嫉妬するので、ルノワールが仕方なく(?)アリーヌの顔に描き替えたといいます。
そういうエピソードの下に絵を観ると、たしかに《田舎のダンス》のアリーヌの微笑みが少し得意げに見えてくるから不思議です。

会場の奥に行くにしたがって、ルノワールの描く日常の美しい瞬間が次々と現れます。
ルノワール展 ピアノを弾く少女たち

会場の最後には、病に体を蝕まれながらも画家が最晩年に描き上げた大作《浴女たち》がお目見え。
自身の人生がどんなに辛く悲しい状況にあろうとも、ルノワールの筆から明朗かつ幸福な輝きが失われることはありませんでした。
ルノワール展 浴女たち

鑑賞後はグッズ売場へ。
今回の展覧会に合わせて製作された図録、箱入りのお菓子、猫のぬいぐるみ、マグネット、マスキングテープ、ポストカード、クリアファイル、一筆箋、ルーペ、ミニキャンバス、コップのフチ子さんとコラボしたミニフィギュアなどが目に留まりました。

その他には、《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》の世界に入り込んだような360度のヴァーチャルな3D空間を体感できる「ハコスコ」という商品が販売されていました。売り場には同製品のサンプルも展示されていて、体験版を試すこともできます。

結局、定番のポストカードを購入しました。
前売り券の特典である《ジュリー・マネ》の猫をイメージしたぬいぐるみも売場レジにて引換券と交換しました。
オルセー ルノワール展 グッズ ポストカード ぬいぐるみ


ご興味を抱かれた方は是非。

ルノワール展 公式サイト
http://renoir.exhn.jp/

この度、パリの美術館案内をAmazon Kindleにて出版致しました。
パリ旅行のお供に是非。



下記YouTubeサイトにて本の紹介動画も公開中です。

この度、LINEの動く(アニメーション)スタンプ、
「昆虫OL ザムザさん」を制作いたしました。

まだ現時点ではLINEストア内での自作の動くスタンプ販売が解禁されてはいない(LINE公式によると2016年後半にサービス開始予定)のですが、スタンプの紹介動画(カタログ)を下記YouTubeチャンネルにて一足早く公開しております。



ご興味を抱かれた方は視聴いただけましたら幸いです。

ちなみに、アニメーションは開発途中のものです。
LINEストアで販売されるものと多少異なる場合があることを予めご了承ください。

行ってまいりました。
黄金のアフガニスタン展 チラシ
黄金のアフガニスタン展 東京国立博物館 表慶館 外観
黄金のアフガニスタン展 東京国立博物館 看板
戦火と略奪の危機に晒されているアフガニスタンの地から博物館職員によって極秘裏に国外へ持ち出されたシルクロード由来の秘宝(紀元前2100年頃から紀元後3世紀頃までに古代アフガニスタンで繁栄したという遺跡から出土した名宝。アフガニスタン北部のティリヤ・テペから出土した黄金製品の数々は日本初公開)の数々を閲覧することのできる今回の展覧会。
展示されている品々の美しさもさることながら、それらを国家の政情不安と度重なる戦火からいかに守り抜くかを考えさせられます。

今回展示されている品々は首都カブールにあるアフガニスタン国立博物館の所蔵品でした。
1979年のソ連による軍事介入とそれに続く内戦の被害を受け、その収蔵品の多くは永遠に失われてしまったと考えられてきました。ところが、博物館員の手により質の高い宝物は極秘裏に国外へ運び出されていました。

本展はアフガニスタンの文化遺産の復興を支援するために企画された国際巡回展でもあります。
2006年のパリのギメ国立東洋美術館をはじめとして、ニューヨークのメトロポリタン美術館、ロンドンの大英博物館など、世界10カ国を巡回し、170万人以上の観覧者が既に来場しているとのこと。

我が国の展覧会場は国立博物館の表慶館ということで展示室が細かく仕切られており、個々の展示物も小さなものが多いことから決して観覧しやすい展覧会とはいえません。
しかし、展覧会のタイトルにもあるとおり、先人達の金の高度な加工技術は一見の価値ありです。
黄金もさることながら、宝飾品の随所に散りばめられたターコイズの放つ青緑、ルビーの赤、ラピスラズリの深い青も時を超えた輝きを放っています。

鑑賞後はグッズ売り場にてポストカードと展覧会のテーマである「黄金」をイメージしたメタル・ブックマーク(金属製のしおり)を購入しました。
黄金のアフガニスタン展 グッズ ポストカード
黄金のアフガニスタン展 東京国立博物館 グッズ しおり


ご興味を抱かれた方は是非。

黄金のアフガニスタン展 公式サイト
http://www.gold-afghan.jp/

行ってまいりました。
黒田清輝展 チラシ
生誕150年 黒田清輝展 東京国立博物館 看板
生誕150年記念ということで、黒田の画業の始まりから絶筆にいたるまでを作品を通して辿ることのできる今回の展覧会。
我々の多くが美術の教科書で見た記憶のある《読書》や《湖畔》が有名ですが、実物を鑑賞したことがある方は意外と少ないのではないでしょうか。
私もそのひとりでした。
画集や教科書で何度か目にしたことのある作品というものは、どこかわかったような錯覚を起こして、今さらわざわざ見なくても……という気になってしまいますよね。
しかし、この《湖畔》という作品、実物は「匂いたつ」ような色香を放つ美しい名画でした。
淡い色調で統一された画面からは湿気を帯びた夏の夕暮れに湖面をわたるそよ風や水の匂い、夕涼みの女性(後に黒田の妻となる照子)が放つ清潔感漂う艶やかな色気が一体となって、観る者を絵の中へ引き込みます。
以下は購入したポストカードの写真です。
黒田清輝展 ポストカード 湖畔

さらに私が心を奪われた一枚は戦火により焼失した大作《昔語り》からの習作。男に甘える舞妓のさりげなくも可愛いしぐさがよくとらえられています。
完成した実物を目にできないことが何とも残念です。
黒田清輝展 ポストカード 昔語り 舞子

展覧会の最後は、あの謎多き《智・感・情》の三美神が迎えてくれます。
こちらも実物を目にしたのは初めてでしたが、金地にくっきりとした臙脂色の輪郭線で縁取られた三人の裸婦の有無を言わせぬ肉体美にただ圧倒されます。
以下はチラシに掲載されていた写真です。
黒田清輝展 チラシ内 《智・感・情》

鑑賞後はグッズ売場にてポストカードを購入。
日本近代絵画の礎を築いた重鎮の名画を堪能できる充実した内容の展覧会でした。
黒田清輝展 グッズ ポストカード



ご興味を抱かれた方は是非。

黒田清輝展 公式サイト
http://www.seiki150.jp

行ってまいりました。

生誕300年記念 若冲展 チラシ 表

昨日(4月22日)が開催初日ということで、
どれくらい混雑することやらと不安と期待が入り混じりつつ会場に到着(PM6:30くらい)。
入場待ちの行列はありませんでしたが、会場内はやはり激混み状態でした。

美術展は入口付近が最も混み合うことが多いので、地階の作品鑑賞は潔く後回しに。
展示作品を人垣越しにチラチラ眺めつつ地階の展示室を出てエスカレーターを使って1階へ。

1階の展示室はさらに人で溢れていました。
それもそのはずです。
その楕円形の展示室のガラスケースのむこうには《動植綵絵》30幅と《釈迦三尊像》3幅が
ズラリと掛けられていたのですから。

ガラスケースの前には黒山の人だかりができ、肝心の絵がよく見えません。
他の企画展の目玉展示物のように絵の前にロープを張って通路を設けて、
立ち止まらないように促しながら鑑賞させることもしていないため、
人垣もなかなかガラスケースの前に留まったまま動きません。
スタッフが遠くの方から「歩きながらの鑑賞をお願い致します」と小さな声をかけてはいますが、
会場内のカオスにかき消されてしまい何ら効力を発揮していませんでした。

いくら遠目から眺めていても、若冲の細部にわたる超絶技巧を堪能することは肉眼では難しいでしょう。

そこでこれから鑑賞に行く皆様にお勧めしたいアイテムが、
モノキュラー(単眼鏡)です。
4倍ほどの倍率のものが手ブレのストレスもなく、
すぐに観たいものにピントが合わせられて使いやすくオススメです。





今回、私も初めて上記のモノキュラーをAmazonにて購入・持参したのですが、
これほど役に立つとは予想していませんでした。
とても小型なのでポケットにも入りますし、レンズも明るく、
薄暗い展示室内の鑑賞に威力を発揮してくれました。

ただ、遠目からでもレンズを覗いていると前を忙しく人が通り過ぎて視界が遮られます。

やはり、何としても側で観たい。

ということで、楕円形のガラスケースの端に自然発生的にできた列の最後尾に並ぶことに。
誰もが身を乗り出して若冲の緻密な描写をじっくり眺めているため、
列は遅々として進みませんが、そこは日本人の礼儀正しさが功を奏し、
少しずつではありますが、前へと人が流れていきます。

ガラスケースの前には膝より少し高いくらいの敷居が設けられているので、
いくら身を乗り出しても、絵の細部までを観ることは困難です。
ここでも大活躍したのが、モノキュラーです。

モノキュラーのレンズを通して観ると、若冲の緻密すぎる(!)描写に深い感動を味わえます。
色彩の鮮やかさと構図の大胆さも鑑賞者の心をとらえて放さないのですが、
注目すべきは人間技とは思えない細部にわたる緻密な描画です。
鳳凰の羽根の一筋一筋の描写はレースのように繊細で美しく、
鶏のトサカや目の周り、脚には人間の手が施したとは思えないほどの小さな点描が無数に見られ、
おもわず鳥肌がたち、「何だこれは!」と幾度となく心の中で叫びました。
まさに「画狂」という言葉がしっくりくるほどに一切の妥協を許さない超高精細、高密度の描写に溜め息の連続です。
画集では決して味わえない実物と対峙してこその体験と感動でした。

私が絵画を鑑賞して心の底から驚嘆したのはこれが初めてです。

およそ10年という歳月をかけて、これほどの高い集中力を持続させて大作を完成させた
若冲の精神力は神がかっているといっても過言ではありません。

閉館時刻の20:00ギリギリ(最後は警備員の方々に「どうかご理解ください」と追い出される)まで、
出口付近の《鳥獣花木図屏風》を眺めつつ、後ろ髪引かれる思いで展示室を後にしました。

その後はグッズ売り場へ。
ここもやはり激混み。

グッズは一通り眺めたところ、
定番の図録、ポストカード、一筆箋、缶バッジ、クリアファイル、マグネット、しおりはもちろんのこと、
マグカップ、扇子、エコバッグ、トートバッグ、Tシャツ、手拭い、胡粉ネイル(若冲がまだ三十代だった頃、宝暦元年から、胡粉を主に扱う日本絵具専門店として京都の東洞院通に店を構えていた「上羽絵惣」製。胡粉や自然由来の顔料を使用した水溶性のネイルカラーは爪に負担が少なく、臭いがほとんどしない。《鳥獣花木図屏風》からイメージした10色の特別パッケージ。〈以下、カッコ内解説は〈公式サイトより引用〉)、団扇(動植綵絵の京うちわ。全6種、各50本、合計300本の完全限定製作品。若冲が生まれた三百年前から京都で団扇を作り続けている《小丸屋住井》に特注した、展覧会限定・特別製作の京うちわ。扇面と持ち手が別々に作られる手法がその特徴。)、瓶入りの日本酒(若冲が生きた300年前には既に伏見で創業していた、老舗の酒造所「山本本家」の純米酒をオリジナルボトルに。正面から見た時に白象と重なる升目が正方形に見えるように、裏側には縦長の升目をプリント。焼き付け加工済みのボトルのため、飲み終わった後も洗浄して使用可能。)、《鳥獣花木図屏風》に登場する白い象のナノブロック(会期中5,000個販売予定。)などバラエティーに富んでいました。

会計待ちの長蛇の列に辟易としつつ、やっとのことで図録とナノブロックを購入。
生誕300年記念 若冲展 図録 グッズ ナノブロック

図録は生誕300年記念に相応しい豪華な装丁と内容です。もちろん、今回の展示作品も網羅されています。
生誕300年記念 若冲展 図録
生誕300年記念 若冲展 グッズ 図録 中身 鳳凰


ナノブロックは渋い緑とらくだ色の二種類の巾着に入っており、表面には「若冲」の文字がブロック状に表記されています。
生誕300年記念 若冲展 グッズ ナノブロック アップ

生誕300年記念 若冲展 図録 グッズ ナノブロック 札

生誕300年記念 若冲展 グッズ ナノブロック 巾着 ロゴ


巾着を開いて中身を取り出します。
設計図もすべて手描きで凝ったつくりです。
生誕300年記念 若冲展 グッズ ナノブロック 中身 設計図

さっそく組み立ててみました。
生誕300年記念 若冲展 グッズ ナノブロック 象 正面
生誕300年記念 若冲展 グッズ ナノブロック 象 右斜め
生誕300年記念 若冲展 グッズ ナノブロック 象 左側面
生誕300年記念 若冲展 グッズ ナノブロック 象 背後
生誕300年記念 若冲展 グッズ ナノブロック 象 頭上

ちなみに、図録だけを購入したい方はグッズ売り場の会計に並ばなくても
エスカレーターを降りてすぐの1階の書籍売り場でも購入可能なので、
そちらを利用した方が時間と労力の無駄使いを避けることができるのでオススメです。

開期が1ヶ月と短く、今後の更なる混雑が明らかでも、何とかもう一度訪れたい、もう一目だけでも見たい、そう強く思わせる展覧会でした。

5月10日から一部作品の展示入れ換えが行われる予定なので、可能ならばもう一度、足を運びたいと思います。


ご興味を抱かれた方は是非。

生誕300年 若冲展 公式サイト
http://jakuchu2016.jp

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