nakaji art

我が心と身体が捉えた美について

2016年03月

行ってまいりました。
カラヴァッジョ展 国立西洋美術館 入口 ポスター


今回の展覧会の目玉は大きく2点。
【その1】
我が国過去最多のカラヴァッジョの傑作10点が一堂に会すること。
【その2】
さらに、カラヴァッジョが殺人を犯し、逃亡の果ての死の直前まで所持していたという遺作《法悦のマグダラのマリア》が世界初公開となること。

国立西洋美術館は金曜日だと20時まで開館しています。
美術館には19時くらいに到着したのですが、
館内は程よく空いていて、
最終入館時刻である閉館30分前になると、入口付近は貸し切りかと思うほどのガラ空き。《女占い師》《トカゲに噛まれる少年》《ナルキッソス》《果物籠を持つ少年》《バッカス》《エマオの晩餐》などの名画の数々を独り占め状態に。
閉館時刻ぎりぎりまで堪能してまいりました。

館内に入るまでは正直に申し上げますと、それほど期待していなかったのですが、出だしの《女占い師》から始まって、カラヴァッジョ作品は本当に傑作揃いです。「おおっ、これも来日したのか!」と驚きと鳥肌の連続で、鑑賞時間が1時間ではとても足りないことが悔やまれました。

ギャラリーの所々には、カラヴァッジョの絵画技法に影響を受けた後世の画家達(カラヴァッジェッスキ)の作品も展示されています。
「蝋燭の画家」として名高いラ・トゥールの作品も展示されていました。

木製の楯にカンヴァスを張り、その上にメドューサの首が描かれた作品も秀逸でした。
大きく見開かれたメドューサの目には神話に登場する英雄ペルセウスの楯のように見たものを瞬時に石に変えてしまうような不気味な魔力が満ちていました。

さて、最後の展示室に展示されていたのは、
今回世界初公開となる《法悦のマグダラのマリア》です。
閉館時刻が迫っているというのに、観覧者が絵の前に立ち、誰もがなかなか離れようとしません。
その絵は強烈なインパクトから、鑑賞者の目を一瞬にして虜にします。
まず、なんといっても目が吸い寄せられるのは、そのマリアの恍惚ともいえる官能的な表情です。肌は死人を思わせるように青ざめています。その白いドレスの腹部は妊娠の兆候を暗示しているかのようにふくよかです。暗い背景にはぼんやりとした光が射し、身に纏うマントの血のように深い赤と対比をなして画面全体を神秘的な雰囲気に包んでいます。
官能的でありながら、どこか恐怖を感じさせる不思議な美しい絵画です。

カラヴァッジョ展 国立西洋美術館 グッズ ポストカード

最後にグッズ売場にてポストカードを購入。
図録も気になったのですが、中身を読む時間はなく、あえなくタイムアウト。
会期中に是非もう一度訪れたいと思わせる展覧会でした。
ちなみに写真右上のチケットは、
常設展が現在閉室とのことで配布された無料観覧券です(2016年3月19日から6月12日まで有効)。3月19日以前に特別展を観覧した方には同じく配布されると思われます。

実は混み合う特別展よりも、常設展の方が心静かにじっくり美を鑑賞できて嬉しかったりします。
なかなか見ごたえのある良いコレクションも揃っていますし。


ご興味を抱かれた方は是非。

「カラヴァッジョ展」公式サイト
http://caravaggio.jp

行ってまいりました。
浦沢直樹展「描いて描いて描きまくる」 会場 世田谷文学館  ポスター

新宿から京王線に乗車して芦花公園にて下車。
南口から道なりに5分ほど歩くと左手に世田谷文学館が見えてきます。
駅からのアクセスは良好です。
浦沢直樹展「描いて描いて描きまくる」 会場 世田谷文学館 入口

さっそく館内へ。
企画展の展覧会場は二階に設けられています。
入って正面の階段を上がると、階段正面が会場入口です。
さすがに人気漫画家初の個展ということもあり、入口付近は混んでいました。
会場内撮影はNG。
ただし、場内に2箇所だけ設けられた撮影ポイントがあり、その傍らで記念撮影も可能です。

第一の撮影ポイントは入口すぐの右手にありました。
『Monster』のひとコマがパネルに。
浦沢直樹展「描いて描いて描きまくる」 世田谷文学館  Monster


漫画家の個展らしく、
とにかく浦沢氏の生原稿が場内の壁を埋め尽くしています。
『Monster』に至っては最終巻を一巻まるごと展示するという徹底ぶりです。
その絵とストーリーに作者がこめた情熱のありったけが観る者を圧倒します。
まさに骨身を削って「描いて描いて描きまくった」作者の姿を作品群が伝えています。

そして、撮影ポイントその2。
『20世紀少年』から「ともだち」の立像。
浦沢直樹展「描いて描いて描きまくる」 撮影ポイント  ともだち



浦沢氏の代表作の生原稿やネーム、ポスターに用いられたイラストはもちろん、
今回の展示では浦沢氏がどのような成長の過程を経て「漫画家、浦沢直樹」になったのかも垣間見ることができます。

小中学生の頃に書いていた漫画ノートはまさに浦沢氏の原点ともいえるもので、
まだ絵の随所に手塚治虫の影響が見え隠れします。

浦沢氏が少年時代を過ごした茶の間の様子を再現した空間では、
この漫画ノートの複製を手にとって読むこともできます。
コマ割りと演出の巧みさが既に大人顔負けで、早熟な漫画少年だったことに驚かされます。

展示の中で特に面白いと感じたのは、氏が大学時代に使用していたノートの数々。
それぞれの表紙には科目ごとに担当教授の似顔絵が描かれています。
個々の特徴を良くとらえてデフォルメされており、
その教師たちがどのような口調と表情で講義を行うのかまで伝わってきます。
このような展示にも漫画家、浦沢直樹の類稀なる人間観察の才を見ることができます。

浦沢作品の一番の魅力はそのストーリーもさることながら、
アクの強い登場人物達の生き生きとした表情にあると私は解釈しています。
喜怒哀楽だけではなく、人間の内面にある強さや弱さ、清らかさや邪悪さまで、
ペン一本で描き出すその表現力はまさに神業です。

さらに、展示された中学時代の文集には「10年後の自分は漫画家になっていたら忙しくて死にそうになっている」と自身の未来像を見事に予見しています。

その傍らには木板を彫って作られた「木の絵本」が展示されています。
これは中学校時代に美術教師から「木で絵本は作れない」と言われ、意地になって作ったものとのこと。
浦沢氏の生き方は中学校時代から既にロックだったんですね。この負けん気と根性があの殺人的なスケジュールで進行する連載漫画を長期にわたって描き続けられる原動力なのかもしれません。

ロックといえば、
浦沢直樹氏は漫画家だけではなくシンガーソングライターの一面も持っています。
会場内の一角では「ともだち」のロゴがデザインされたギターが展示されている他、
氏の作詞作曲、歌唱しているCDを視聴できるスペースまで設けられています。
漫画とはまたひと味違ったメッセージを堪能できると思います。

会場の一階ではグッズの販売が行われていました。
多くは浦沢作品のコミックですが、
先ほど紹介した音楽CDも販売されています。
定番のポストカードもあります。

今回の展覧会のガイドブックも販売されていたので、早速そちらを購入。
インタヴューはとても読み応えがあります。
漫画家を目指している方だけではなく創作活動を行っている方は
良いヒントを得られる内容だと思います。
収録されているイラストも初期のものから最新のものまで網羅されているので
浦沢作品の進化を絵で辿ることのできる構成となっています。

ご興味を抱かれた方は是非。

世田谷文学館 Webサイト
http://www.setabun.or.jp/index.html

行ってまいりました。
アートたけし展 入口

「HANA-BI」や「アキレスと亀」など北野武監督の映画には
自身の描かれた絵画が登場します。
それが映画の世界観と一体となって、とても心に残っていました。
いつかぜひ実物を生で観たいとかねてより思っていたのですが、タイミングが合わず。
この度、それがようやく実現しました。

会場に入ると、そこに展示されているのは
たけしさん(ここでは、個人的な面識がないにもかかわらず、勝手な親しみと最上の敬意をこめましてあえて「さん」とお呼びすることをお許しください)自身の手がけられた絵画と立体作品、そして木版画です。

絵画は主にキャンバスにアクリル絵具で着彩したもの。
まず目を奪われるのがその色彩の鮮やかさです。
「この色とあの色を組み合わせるとこういう画面が出来上がるのか」と、
その色彩感覚の素晴らしさに唸ってしまいます。
一見シンプルかつ大胆に描いているようでいて、
細部(女性の服や靴のデザイン、車や動物の質感の描写など)は点描を効果的に施したりと
実に繊細かつ緻密で観飽きることがありません。
細部まで丁寧に仕上げるというたけしさんの細やかな性格がよく現れています。

私のお気に入りは街灯の下で抱き合う男女の横に現れたアリクイ(のような動物)が
その長い鼻をのばして女性のスカートをめくっている絵です。

男女のロマンティックな逢瀬に現れた一頭の巨大なアリクイが
瞬時にして笑いの場面へと変えています。
そのアリクイの惚けた表情と、
ブルーとイエローを主色とした夜の画面構成により、
何とも言えない優しい静けさと可笑しみに満ちています。
女性の下着の柄まで丁寧に描いているところはさすがです。
その赤が視線誘導の絶妙なアクセントになっています。

たけしさんの描く人物はときに顔半分が消えています。この絵に描かれた抱き合う男女も共に顔半分がありません。これは私の勝手な解釈ですが、たけしさんは人間という存在はそもそも不完全な存在であり、その欠落した部分を心に抱えた者同士が互いを補い合ってはじめて一人の人間になると考えているのではないでしょうか。
「絵を描いてるときはオイラ、そんな面倒なこと考えちゃいないよ」とたけしさんに一笑にふされそうな私の極めて個人的解釈ですが。


たけしさんの絵を観ているうちに
自分がいかにツマラナイ価値観に凝り固まって
世界を捉えているかを痛感しました。

絵とは、表現とは、
もっと自由で良いんだなと救われた気持ちになっている自分がいました。

たけしさんの絵には
上手く描こうとか、観る者を感嘆させてやろうといったイヤらしいあざとさや計算がありません。

子供の描く絵が大人のツマラナイものの見方や価値観を粉砕する無垢なエネルギーに溢れているように、たけしさんの絵にも素直で純真な力が炸裂しています。
狙ってできるものではありません。
まさに、天才です。

立体作品では、
メジャーを使った哲学的な作品に惹かれました。
長く伸ばしたメジャーを黒い絵具を塗ったキャンバスに貼り付けて、その所々に英語で誕生(Born)から死(DIE)までのたけしさんの過去と未来の出来事がカラフルに記されています。
つまり、メジャーの尺を自身の一生の時間に例えているわけですね。

さらに、
たけしさんの細部の装飾へのこだわりと優れた色彩感覚は、木版画という表現手法により、さらなる進化を遂げているように見受けられました。

私が思わずその場に立ち尽くして見入ってしまった木版画の作品があります。
それは、タンスの上に置かれた金魚鉢に手を伸ばす猫の姿をとらえたものです。

夏目漱石の小説世界のようなレトロで美しい調度品の置かれた室内のただ中で椅子に片足を乗せて金魚鉢へと伸び上がる白い猫。金魚鉢の中では金魚がふわふわと泳いでいます。

細かい畳の目やタンスの取っ手の装飾、壺の模様にいたるまで細部に一切の妥協なく彫り込まれています。多忙な合間を縫っての作業でしょうから、一体完成までにどれほどの時間を要したのだろうと想像して気が遠くなってしまいました。

今回の展示では、
特別にヴェネツィア国際映画祭でたけしさんが授与された金と銀の獅子像、さらにフランス政府から贈られた勲章も展示されていました。

出口付近には、記念撮影のできるスポットも設けられています。
「アートたけし展」会場内に設置された撮影スポット



以下の写真は展覧会図録とチラシ、そしてグッズのペーパーウェイトです。図録のカバーを広げると一枚の大判ポスターのようになっており、気に入った絵を表紙にすることもできます。その裏面はたけしさんの撮り下ろしポスターになっています。
ペーパーウェイトの図柄は版画作品「クジラ」と「玉乗りピエロ」です。
どちらもとても美しい作品だったので両方購入しました。
アートたけし展 図録、チラシ、グッズのペーパーウェイト



ご興味を抱かれた方は是非。

「アートたけし展」公式サイト
http://www.art-takeshi.com/

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